2006年02月07日

[外伝]エピソードX 定刻の逆襲

この物語は、アキレス星最高の指導者であり8年前に地球にて永眠された故・タピオカ星人元帥が生前書き記した自伝である。

 ジェーンは夫の賭け事好きにうんざりしてこう聞いた。
 
 「あなた!また賭け事やってるんじゃないの!?」
 
 すると夫はこう言ったんだ。
 
 「やってないよジェーン、嘘だと思ったら僕が賭け事をやめたかどうか賭けるかい?」
 ってね。

 こんにちは、タピオカ星人です。考えるところがあってアメリカンジョークでつかみを狙ってみたがいかがだっただろうか。前回の続きを話そうと思う。

 私が官邸に着くと、あいにく大統領は留守だった。なんでも彼はとても几帳面な人間で、会うためにはアポを取る必要があるらしい。私は翌日に面会の約束を入れ、家路を急いだ。

 明くる日は私の人生において最も重要な日となったことを記さなければならない。結論から言えば、大統領に会い、彼を瀕死の状態に追い込んだ上で私がこの星の政治(星治という)の実権を握ることを全星民に向けて発表したのである。瀕死の状態と言うと聞こえは悪いが、アキレス星で生まれた人種は死ぬ瞬間以外痛みを感じないので特に問題はない。さらになぜ私がこんなにも簡単に大統領を傷付けることができたかと言えば、まずこの星の大統領は元来世襲制であったため争いを経験していなかったという点が挙げられる。さらにはこの星と地球とでは重力に差があるため、相対的に彼らは地球人より弱いのだ。このような都合のいい設定にできるのも小説のいいところである。

 私はアキレス星を支配することとなった。しかしここからが悪夢の始まりであった。次の日から前大統領が再三に渡って復権への攻勢を仕掛けてきたのである。

 1日目、朝4時。

 トゥルルルル・・・トゥルルルル・・・。

 早朝の爽やかな空気を引き裂く爆音で我が家の電話が鳴り響いた。

 「・・・はい、タピオカですが」
 「おう、奥さんか。命が惜しければあまり一人で出歩かないほうがいいぜ」

 ガチャ、ツー、ツー・・・。

 逆襲開始の宣言は明白だった。しかし同じく地球人である妻クリープも一般的なアキレス星人と比べれば異次元の強さであったため、その日もガッツリ一人で出かけて行ったのが我が妻ながら心強いところである。

 2日目、朝4時。

 トゥルルルル・・・トゥルルルル・・・。

 「はい、タピオカでございます」
 「奥さん、昨日は見逃してやったが・・・。今日同じようなマネをしてみろ、命はないぜ」

 ガチャ、ツー、ツー・・・。

 前大統領とはいえ、地球人の強さに腰が引けて手が出せないのはわかりきっていた。その日も妻は公共交通機関で爆睡するという無防備さで出かけていった。

 3日目、朝4時。

 トゥルルルル・・・トゥルルルル・・・。

 「はい、タピオカです」
 「奥さん、バスの中で寝ると乗り過ごすぜ」

 ガチャ、ツー、ツー・・・。

 怖さのあまりか脅しが脅しではなくなっていた。妻はヨガ教室に出かけた。

 4日目、朝4時。

 トゥルルルル・・・トゥルルルル・・・。

 「おはようございます、大統領」
 「えっ、あ、おっ、おはようございます」

 ガチャ、ツー、ツー・・・。

 毎日定刻に電話をかけてくることもそうであったが、挨拶をすると挨拶を仕返してくるところはやはり律儀であった。この奇襲挨拶作戦にて前大統領の逆襲はピリオドを打った。かくして前大統領との問題も解決し、また連綿と続く世襲制の大統領一家に一般星民も愛想を尽かしていたという事情もあってタピオカ新大統領は急速に受け入れられていった。

 その後のアキレス生活は好調である。それまでの内向的な星府運営の方向を一転し、武力を付けることを志してそれも順調に育っていった。また私生活では子宝にも恵まれた。長男をミルクティーと名付けタピオカミルクティーとかけた。さらに長女のときは調子に乗ってコーヒーと名付け妻のクリープとセットにした。幸せだった・・・ほんまに幸せじゃった。あの事件で地球行きを決心するまでは・・・。
posted by Flyers at 20:27| Comment(0) | TrackBack(0) | タピオカ星人自伝 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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